Rebirth

大内 暢仁

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  1. パッヘルベル:組曲 嬰ヘ短調
  2. パッヘルベル:前奏曲 ニ短調
  3. ラインケン:アリア「嫁をもらえなんて言わないで」による変奏曲
  4. ブクステフーデ:アリア ラ・カプリチョーザ
  5. ヘンデル:シャコンヌ ト長調
  6. パッヘルベル:シャコンヌ ヘ短調
  7. ブクステフーデ=ストラダル=大内暢仁:シャコンヌ ホ短調
  8. ロワイエ:スキタイ人の行進

大内 暢仁(ピアノ)
2020 年 9 月 1 日~ 3 日、コピスみよしにおけるセッション録音
使用ピアノ:ニューヨーク・スタインウェイ D(タカギクラヴィア所蔵)

プロデューサー/ディレクター:内藤 晃
ピアノ・プロデューサー:高木 裕
レコーディング・エンジニア:北見 弦一

大内暢仁「Rebirth」紹介ビデオ
ブクステフーデ:アリア ラ・カプリチョーザより(CD 音源)& インタビュー
ロワイエ:スキタイ人の行進
(タカギクラヴィア松濤サロンにて別日に収録)
大内暢仁 バロックを語る

バッハが憧れた作曲家たち

このアルバムに収録されている曲はバロック音楽の作曲家のものです。パッヘルベル、ブクステフーデ、ラインケン……。バッハが憧れたドイツの作曲家たちです。

パッヘルベルは「カノン」の作曲家として有名ですね。バッハは少年時代、兄の所有していたパッヘルベルの楽譜を月明かりを頼りに写譜しており、恐らく兄の結婚式に出席したパッヘルベルに会っていることでしょう。

今回の選曲はカノンの印象を吹き飛ばすようなものばかり。きっとパッヘルベルへのイメージが変わることでしょう。

ブクステフーデは若きバッハが多大な影響を受けた作曲家です。バッハは20歳のとき、ブクステフーデに会うために徒歩で大旅行をし、休暇を無断で延ばしたという逸話も残っています。

ラインケンのもとをバッハが訪れたのは1720年、バッハが30代半ばのとき。このときバッハの演奏を聴いたラインケンは賞賛の言葉を送っています。また、バッハはラインケンの『音楽の園』を鍵盤楽器用に編曲しています。

世界初のモダンピアノによる録音

自分がずっと「こんな CD あったらいいのにな……」と思っていたアルバムを、自分で創ることにしました。

我々ピアニストにとって、レパートリーの中で最も古い作曲家というのはバッハになりやすいんです。他はせいぜいバッハと同い年のヘンデルやスカルラッティ。これらは数えきれないほどのモダンピアノでの録音があります。

では、バッハより前は?

すぐに思い浮かぶのはやはりグールドのバードやギボンズ集でしょうか? 素晴らしい録音です。彼の演奏するスウェーリンクも素晴らしい。ですが、バロック音楽ではなく、もっと前の時代……いわゆるルネサンス音楽になります。

バッハ以前のバロック音楽となると、鈴木雅明氏やヴァルヒャのオルガン、そしてロンドーやコープマンのチェンバロの録音があり、聴けばとてもワクワクします。じゃあモダンピアノでは……?

……残念ながらそのようなアルバムは見当たりませんでした。

しかしながら私自身が強く思っているのは「バッハ自身が強く影響を受けた音楽をモダンピアノで聴きたい」ということ。そしてこれまで、「ピアノ界」にブクステフーデの名を浸透させたい、パッヘルベルは「カノン」だけじゃないということを知ってほしい! と演奏活動をしてきました。

このアルバム『Rebirth』は、そのようなバロックの曲が現代のピアノで蘇るように、と想いを込めています。

一人の生徒が変えた録音に対する思い

実をいうと私はこれまで録音に興味が全くありませんでした。その考えを変えてくれたのが、新型コロナで世の中の状況が一変したころにちょうど新しくレッスンを始めた生徒です。

彼女はある日のレッスンで私が ResonanCe のコンサートで演奏したバッハのオルガンソナタがお気に入りで、寝る前によく聴いていると話してくれました。

レッスン後、そのオルガンソナタを演奏すると、彼女は泣いていました。彼女が帰ったあと、なんとも表現できない不思議な気持ちになったのをはっきりと覚えています。

こんな風に感じ取ってくれる人が一人でもいるのであれば、何か形に残すことも悪くないんじゃないのかと考えるようになりました。時間は有限で、聴いてほしいと思っていた人がいても、それが叶わないところに行ってしまうかもしれない、もしかすると自分がそうなってしまうかもしれない。

そんなときにプロデューサーの内藤晃さんとお話する機会があり、そのようなお話をすると「他に誰もやってないんだから是非!」「(CD を作るにあたり心配や問題がある部分は)僕が手伝うから、一緒にやろう!」とトントン拍子にお話しが進みました。

やるからには自分の持っているもの全てを詰め込めるよう練習しました。普段ピアノの音楽しか聴かない人にも、普段オリジナル楽器で聴いている人にも、面白いと思ってもらえる演奏を。そして私にきっかけを与えてくれた生徒に必ず喜んでもらえるものを!

――大内 暢仁

ピアノ

大内 暢仁

東京音楽大学ピアノ科卒業、同大学院科目等履修生修了。 これまでにピアノを佐竹宏子、広瀬宣行、村上隆の各氏に、クラヴィコード、チェンバロ、バロックダンスを臼井雅美氏に師事。 丸山桂介氏のもとでルネサンス・バロック時代の音楽史を専門的に学ぶ。 バロック音楽の精神性を当時の哲学や科学、ゲマトリア(数秘術)など様々な観点から研究し、それらを基にオーセンティックな古楽をモダンピアノで奏でることをライフワークとしており、主としてブクステフーデの研究に取り組む。 音楽ユニット ResonanCe メンバーとしても活動。